ロケットナウ1周年、送料0円で業界に激震を与えた新星の全貌
韓国EC最大手Coupang傘下のフードデリバリーサービス「ロケットナウ(Rocket Now)」が、2026年1月14日でサービス開始からちょうど1年を迎えた。配送料・サービス料完全無料という業界の常識を覆す価格戦略で急成長を遂げ、アプリダウンロード数は200万超、加盟店舗数は3万店以上に達している。Uber Eatsや出前館の牙城に挑む新勢力として、日本のフードデリバリー市場に大きな変革をもたらしつつある。
目次
韓国最大手ECが日本市場に再参入した背景
ロケットナウを運営するCP One Japan合同会社は、韓国の巨大EC企業Coupang(クーパン)の日本法人だ。Coupangは「韓国のAmazon」と称され、ニューヨーク証券取引所に上場するFortune 150企業で、年間売上高は約4.5兆円、従業員数は約8万人を擁する。実は2021年に「クーパンイーツ」として日本のフードデリバリー市場に参入したが、2023年に一度撤退。今回のロケットナウは満を持しての日本市場再挑戦となる。
2025年1月14日、東京都港区青山エリアでサービスを開始。代表者はSamuel OBrien(サミュエル・オブライエン)氏で、本社は東京都港区六本木のトライセブン六本木に構える。公式サイト(https://www.rocketnow.co.jp/)ではiOS・Android両対応のアプリを提供しており、公式X(旧Twitter)アカウント「@Rocketnow_jp」では1周年キャンペーンも実施されている。
他社との決定的な違いは料金体系にある
ロケットナウ最大の武器は、その破格の料金体系だ。フードデリバリー利用者への調査で「実店舗より価格が高い」ことが最大の不満(81.3%)として挙げられる中、この課題に真正面から取り組んでいる。
| 項目 | ロケットナウ | Uber Eats | 出前館 | Wolt |
|---|---|---|---|---|
| 配送料 | 0円 | 50〜550円 | 0〜500円 | 50〜350円 |
| サービス料 | 0円 | 10〜12% | 0円 | 10〜12% |
| 少額注文手数料 | なし | 150円 | なし | あり |
| メンバーシップ | 不要 | 月額498円で送料無料 | なし | 月額498円 |
具体的な例で比較すると、バーガーキングの「ワッパー」(店舗価格1,040円)を注文した場合、他社デリバリーでは商品価格が1,750〜1,920円に上乗せされ、さらに配送料300〜850円とサービス料が加算される。一方、ロケットナウでは店舗と同じ1,040円で注文でき、配送料もサービス料もかからない。同じ1,200円相当のメニューを注文した場合、Uber Eatsでは合計1,620円かかるところ、ロケットナウでは1,200円のままだ。
初回クーポンも充実しており、1回目50%OFF(最大1,000円)、2回目20%OFF(最大1,000円)、3回目10%OFF(最大1,000円)、4回目50%OFF(最大2,500円)と、最大5,000円分の割引が受けられる。友達紹介では紹介された人が5,000円分、紹介した人が1,000円分のクーポンを獲得できる。
なお、収益モデルは加盟店からの販売手数料で、開始3カ月は**22%**と他社より低めに設定されている。「送料0円・サービス料0円」は現在のキャンペーン特典であり、将来的に有料化される可能性もあるが、Coupangの潤沢な資金力を背景に当面は継続される見込みだ。
1年で13都道府県に急拡大したエリア展開
サービス開始当初は東京都港区のみだったが、わずか1年で13都道府県、約90以上の市区町村にまで拡大した。Uber Eatsが3〜4年かけて達成したエリア拡大を、ロケットナウは約8カ月で実現したことになる。
エリア拡大のタイムライン
- 2025年1月14日:東京都港区でサービス開始
- 2025年5月:東京都心10区まで拡大
- 2025年8月:東京23区全域+神奈川・千葉・埼玉に展開
- 2025年9月30日:大阪市でサービス開始、名古屋・京都・神戸にも拡大
- 2025年11月:福岡・仙台・広島・静岡でサービス開始(12都府県)
- 2025年12月16日:北海道(札幌市)に進出(13都道府県)
現在の対応エリアは、東京都(23区全域+多摩地域21市)、神奈川県(横浜市、川崎市、相模原市など16市町)、千葉県(千葉市、船橋市、柏市など12市)、埼玉県(さいたま市、川口市、越谷市など21市町)の首都圏に加え、大阪府(大阪市、堺市、東大阪市)、京都府(京都市)、兵庫県(神戸市、西宮市、尼崎市など)、愛知県(名古屋市)、静岡県(静岡市、浜松市)、宮城県(仙台市5区)、広島県(広島市8区)、福岡県(福岡市7区)、北海道(札幌市)となっている。
競合他社との比較では、Uber Eatsと出前館がともに全国47都道府県をカバーし、Uber Eatsは432都市以上、出前館は4,000カ所以上の配達拠点を持つ。Woltは26都道府県、menuは33都道府県(2024年以降一部縮小)に展開しており、ロケットナウのエリアカバー率は約27%にとどまる。ただし、主要都市への集中展開と急速な拡大ペースを維持しており、公式発表では「日本全国のできるだけ多くの地域に展開」を目指すとしている。
App Store評価4.6と高評価を獲得したユーザー満足度
サービス開始から1年で、ロケットナウのアプリはApp Store評価4.6(レビュー約3.2万件)、Google Play評価4.2〜4.5(10万ダウンロード以上)を記録。競合大手のUber Eats(App Store 4.5)、出前館(4.5)、Wolt(4.6)と同等以上の高評価を獲得している。
ユーザーから高く評価されているポイント
コストパフォーマンスが最も評価されており、「配達料・サービス料が完全無料で驚いた」「Uber Eatsより安く食べられた」「クーポンで実質無料でマックが届いた」といった声が多い。配達スピードも好評で、「予定より5分早く届いた」「30分以内に届いてロケットの名前通り」など、平均15〜25分での配達を実現している。アプリのUIについても「操作がシンプルで分かりやすい」「iPhone Dynamic Islandで配達状況がリアルタイム表示される」と好評だ。サポート対応では「電話案内オペレーターが親切丁寧」「コールから1分以内に繋がった」という評価がある。
改善を求める声も存在する
一方で、配達エリアの制限(「アプリを入れたが自宅がエリア外だった」「地方都市で使えない」)、店舗数の少なさ(「他のデリバリーで注文できるお店がない」)、配達関連のトラブル(「配達員が迷って遅れた」「住所のピン精度に問題がある」「複数件同時配達で料理が冷めた」)といった課題も指摘されている。「安すぎて逆に怪しい」という声もあるが、韓国最大手EC企業傘下という背景を知ると安心感を持つユーザーも多い。
X(旧Twitter)では「ロケットナウっていうフードデリバリー初めて使ったらすぐ届いてびっくりした。マジでロケットだ🚀」「クーポンで実質無料だった」といったポジティブな投稿が多い一方、「ダブル・トリプル配車で商品のクオリティが考慮されていない」といった指摘も見られる。
3万店舗を超えた加盟店の顔ぶれ
現在のロケットナウの加盟店舗数は3万店舗以上。Uber Eatsの12万〜18万店、出前館の11万店と比較すると約4分の1から6分の1の規模だが、サービス開始1カ月で1,500店舗以上が加盟し、急速に拡大を続けている。2週間で売上が400%増加した店舗も報告されている。
店舗価格と同一で注文できる「ゼロ配MAX」対象の主要チェーンとして、バーガーキング(ワッパーなど店舗と同価格)、ウェンディーズ、シェイクシャック、マムズタッチ(韓国No.1バーガー&チキン)、ゴーゴーカレーがある。その他、かっぱ寿司、ピザハット、大阪王将、壱角家、吉野家なども加盟している。
注意点として、マクドナルドとケンタッキーは2025年11月時点で未加盟となっている。ロケットナウは「大手ブランド中心」ではなく「地域の人気店を積極的に紹介」する戦略を採用しており、各エリアの個人経営店舗も積極的に加盟を進めている。
競合各社もロケットナウの価格攻勢に対抗措置を講じており、出前館は2025年12月から「お店価格で出前館」トライアルを開始。フードデリバリー市場の価格競争が激化している。
配達員の働き方は2種類から選択可能
ロケットナウの配達員には**業務委託契約(個人事業主)とシフト制(時給制)**の2つの働き方がある。
業務委託契約では、ロケットナウと直接契約し、完全歩合報酬制(1件400〜1,500円程度)で好きな時間に自由に稼働できる。Uber Eatsなどと同様の働き方で、他社との掛け持ちも可能だ。シフト制ではPickGoなどの法人パートナー経由で登録し、事前にシフトを決めて約2,000円前後の固定時給が保証される。
配達員の募集条件は満18歳以上(高校生可)、日本国籍保持者で、スマートフォン・身分証明書・口座情報が必要。配達手段は自転車、バイク、軽貨物車両から選べる。報酬は毎週火曜日締め・金曜日振込の週払いで、初回配達ボーナスとして紹介コード利用で4,000円が付与される。2025年8月27日からはリワードプログラムが開始され、1配達あたり最大**20%**の追加報酬が得られる。
特徴的なのは現金配達がないこと。キャッシュレス決済のみのため、お釣り管理が不要で配達員の負担が軽減されている。配達員からは「夜だけで過去最高の1日16,297円稼げた」「1時間で2,000円以上稼げた」という声がある一方、「配達員のバッド評価がつきやすいシステム」という指摘もある。
サービス開始1年で200万ダウンロードを突破した成長軌跡
ロケットナウの1年間の成長は目覚ましい。2025年8月にはサービス開始からわずか8カ月で100万ダウンロードを突破。2025年7〜8月にはフードデリバリーアプリ部門でダウンロード数2カ月連続1位(Sensor Tower調べ)を記録し、現在は200万ダウンロード以上に達している。
メディア露出も活発で、2025年11月には俳優の松重豊さんとのんさんを起用した新CMの発表会を開催。日本経済新聞では串カツ田中のロケットナウ導入が報道されるなど、注目度は高まっている。週刊プレイボーイNEWSではUber Eats配達員視点からの特集記事も組まれた。
カスタマーサポートは、注文者向けフリーダイヤル(0120-777-568)、アプリ内チャット・メール、カスタマーセンター(050-3823-7411、8時〜翌4時)を用意。配達員向けには0120-600-433(8時〜翌4時)、加盟店向けには0120-555-452と050-3823-7414が設けられている。
アプリの利用方法とよくあるトラブル対処法
ロケットナウの利用は非常にシンプルだ。App StoreまたはGoogle Playからアプリをダウンロードし、電話番号とメールアドレスで会員登録。配達先住所を設定し、好みの店舗・メニューを選んで注文するだけ。決済方法はクレジットカード、デビットカード、PayPay(2025年11月より追加)に対応しているが、現金払いは非対応となっている。営業時間は午前8時〜翌午前3時と長時間対応だ。
よくあるトラブルとしては、「商品が届かない・配達遅延」「間違った商品が届く・商品不足」「クーポンが適用されない」「配達員と連絡が取れない」が挙げられる。問題発生時はアプリ内で配達状況をリアルタイム確認でき、写真撮影して証拠を保存することが推奨される。返金はクーポンでの対応が基本だが、再配達を選択できる場合もある。
競合他社と比較したロケットナウの強みと弱み
強みとして、配送料・サービス料完全無料(業界唯一)、メンバーシップ登録不要、店舗価格と同一の店舗あり、最大5,000円の初回クーポン、平均15〜25分の高速配達が挙げられる。弱みとしては、対応エリアが13都道府県と都市部中心(Uber Eats・出前館の約27%)、加盟店舗数が競合の4分の1〜6分の1、現金払い非対応、マクドナルド・ケンタッキーなど一部大手チェーン未加盟がある。
日本のフードデリバリー使用率は約**9.26%で、韓国の約74.58%**と比較すると成長余地は大きい。ロケットナウの「送料・サービス料0円」戦略は、この市場拡大の起爆剤となる可能性を秘めている。
まとめ:日本フードデリバリー市場の勢力図を塗り替えるか
ロケットナウは、韓国最大手ECクーパンの潤沢な資金力を背景に、「配送料・サービス料完全無料」という前例のない価格戦略で日本市場に殴り込みをかけた。サービス開始1年で13都道府県、3万店舗以上、200万ダウンロードという急成長を遂げ、App Store評価4.6と高いユーザー満足度を獲得している。
Uber Eatsや出前館といった先行サービスとのエリア・店舗数の差はまだ大きいものの、主要都市への集中展開と圧倒的なコストメリットにより、急速にシェアを拡大中だ。競合他社も「お店価格」トライアルを開始するなど、ロケットナウの登場は日本のフードデリバリー市場全体の価格水準を押し下げる効果をもたらしている。
今後の焦点は、現在の「送料0円・サービス料0円」キャンペーンがいつまで継続されるか、そしてマクドナルドやケンタッキーといった主要チェーンの加盟が実現するかだ。日本のフードデリバリー市場の勢力図を塗り替える可能性を持つロケットナウの動向から、今後も目が離せない。
